《職場の教養に学ぶ》
お題:連帯感を高める
2025年11月6日(木曜)
【今日の心がけ】まず自ら動きましょう
砂川昇建の思うところ
現代人は「成功」や「成長」を「いかに最短距離で、効率的に達成するか」という「合理的思考(ロジカル・シンキング)」で捉えがちです。 一方で、掃除・挨拶・奉仕など、一見地味だが確実に人を磨く行いが本質的な成長につながるという視点は、非常に東洋的です。合理的思考とは、原因と結果を明確にし、無駄を省き、論理とデータに基づいて最適な方法を選ぶ、という考え方です。この考え方の源流は、古代ギリシャの哲学(ロゴスの思想)にあり、近代以降は デカルト・ニュートン・ベーコンなど西欧の近代合理主義によって体系化されました。つまり、 「世界は理性(reason)によって理解でき、制御できる」という信念が西洋的合理主義の根本にあります。現代の経済・科学・教育・ビジネスは、ほぼこの思想の上に成り立っています。一方、東洋思想(特に日本・中国・インドの思想)は、「人間は自然の一部であり、完全に理で制御できるものではない」という前提に立ちます。つまり、東洋では 「結果(成功)」よりも「過程(修養)」「理性」よりも「調和・心・徳」を重んじるのです。現代の合理的思考は基本的に西洋思想の影響を強く受けています。しかし注意すべきは、「合理=悪」ではない、ということです。問題は、「合理性」だけを信じて、「非合理に見えるが人を整えるもの」(掃除・礼・感謝・祈りなど)を軽視してしまうと、心のバランスが崩れていく点にあります。西洋の学問はもともと「合理・観察・実証」を基盤に築かれました。デカルト以降の近代科学は次のような前提を持っていました。世界は客観的に存在する。物体は実体(substance)として存在する。観察者は対象から独立している。 ところが、20世紀に入って登場した量子力学は、この前提を根底から揺るがしました。「物体とは固定的な実体ではなく、観測関係の中で現れる一時的な現象」であることが明らかになったのです。量子論が「物質的実体の不在」を科学的に示したように、仏教は「存在の実体の不在」を精神的・哲学的に洞察していたのです。しばしば誤解されますが、「空」は「虚無」ではありません。仏教の「空」は、存在が関係性の中にのみ成立する状態です。量子物理学でも、真空(vacuum)は「何もない」ではなく、「粒子が生まれては消えるゆらぎの場」=エネルギーの充満した「潜在空間」です。つまり、「空」は「無」ではなく「可能性の海」。掃除や挨拶など一見仕事と無関係に思える事も実は深い意義があります。
著者 砂川昇建




