《職場の教養に学ぶ》
お題:認められたい心
2025年1月16日(木曜)
【今日の心がけ】自己成長を図りましょう
砂川昇建の思うところ
「認められたい心」と「マズローの自己実現(承認要求)」を仏教的に解説してみます。マズローの欲求階層説によれば、人間の欲求は以下の5段階で構成されます:1.生理的欲求(食べる、寝るなどの基本的な欲求)2.安全欲求(安心して生活したいという欲求)3.社会的欲求(所属と愛の欲求)4.承認欲求(他者からの評価、自己尊重)5.自己実現欲求(自分の可能性を追求し、理想を実現する欲求)。承認欲求とは、自分が他者から認められたい、尊重されたいという欲求を指します。一方、自己実現欲求は、自分自身の価値を深く理解し、自己の可能性を最大限に発揮することを目指します。仏教では、人間の苦しみの原因を「煩悩」として説明します。その中でも「欲望」や「執着」は重要な位置を占めており、承認欲求はその一部と見ることができます。この心が強すぎると、他者の評価に過剰に依存し、満たされない感情が生じやすくなります。この状態は仏教でいう「苦(dukkha)」の一因です。仏教の教えでは、この世のすべては「無常」であるとされます。つまり、他者の評価や承認も変わりやすいものであり、それに執着すると心が不安定になります。承認欲求が満たされることを幸せの基盤とする限り、その幸せは永続しないということを仏教は示唆しています。仏教的な自己実現には、他者との調和や利他行が含まれます。単に自分の能力を発揮するだけでなく、それを他者の幸福のために役立てることが理想とされます。仏教では、「自己」というものが固定された実体ではなく、因縁(原因と条件)の結果である「仮の存在」であると教えます。自分の価値は他者の評価ではなく、行為や意図(業)によって形作られると考えます。しかし、他者からの評価や承認に執着しすぎず、かといってそれを完全に無視するのでもない、「中道」を歩むことが重要です。「認められたい心」や「承認欲求」は人間の自然な感情ですが、仏教の教えでは、それに執着することで苦しみが生じると説きます。一方で、承認欲求を完全に否定するのではなく、それを内面的な成長や他者への貢献に向けることで、仏教的な自己実現に近づくことができます。自己実現は、頑張る糧として心を鼓舞するために重要ですが、「今の自分(スキル)」「最小の努力で得られる最高の評価」が前提であるとするなら、それはエゴ(他人の迷惑を考えず、自分の利益のみを追求する行動や考え方)に過ぎません。
著者 砂川昇建